胡蝶の夢:更新情報『TO YAMATO』 04

2010/12/24 19:00

胡蝶の夢~夢の覚え書 を更新します。
宇宙図書館の「BOOKFAIRno.5 Xmas&NewYear petit特集」に参加しています。

『TO YAMATO』
ヤマト時代になる前の、真田志郎を中心とした物語です。
相変わらずオリジナルキャラクター満載ですのでご注意ください。

今回準備不足で、しばらくblog連載という形にしますので、どうぞお付き合いいただければ幸いです。


 序 章 : この丘の向こうに  (1)
 第1章 : めぐり会い      (1)(2)
 第2章 : 夢はかなたへ
      (1)←(2)(3)(4)
 外 伝 : 星下之宴       (既出) 【以下未定】





      第 2 章  - 夢はかなたへ -

(武士のお題:no.26「異国憧憬」)


=1=

 ジイジイと蝉の鳴き声が、開け放した窓から飛び込んでくる。
 2190年の夏は、記録的に暑かった。
 巷では熱中症で倒れる者が続出したが、ここ、宇宙戦士訓練学校も例外ではない。学生舎はまさに蒸し風呂状態だった。とはいえ、毎年恒例の『これもまた訓練だ』という大義名分が堂々とまかり通ってはいたものの、訓練生たちが『自習』と称して冷房のある校舎へ逃げ込むのも、今年は苦笑とともにおおめに見られていた。

 だが、この総合科学研究室は閑散としている。それは早朝だからという理由では、勿論ない。
 ここが『変人の巣窟』と呼ばれていることを知らないのは、ここへ集まる人間だけである、というのは何時の時代も変わらない。

 『変人』と分類されるひとりが、窓を閉めながら言った。
「ねえ、黎那(れな)は自由課題、何か考えた?」
 同じく『変わり者』と呼ばれるひとりが、顔を上げる。
「ん。――槇(しん)は?」
 キーボードを打つ手を止め、質問を返した。
「まだ決めてないんだよね。志郎は?」
 『怪物』が冷房のスイッチを入れると、肩を竦めた。
「ふうん。――それなら、あたしの話にのらない?」
「何するつもりなの?」
 槇が、仔犬のようだと言われる薄茶の瞳を、きらりと輝かせた。

 宇宙戦士訓練学校へ入学し、半年近く。
 真田志郎、佐藤槇(しん)、そして藍澤黎那(あいざわれな)の3人は、ここで机を並べている。

 あの日、試験会場で顔を合わせた3人は驚いて目を瞠った後、にやりと笑った。
「偶然だな」
「ご縁、じゃない?」
「腐れ縁はごめんだけど」
 それぞれが勝手なことを口にして、だが、最後は一緒に「まったくだ」と締め括った。
 結果。
 互いに握手を交わした3人が、入学考査の上位三席を占めることとなった。
 希望課程は、共に技術科。
 中でも、真田の成績は群を抜いており、また、既に博士号を有し最高学府にて実績を上げていることも相まって、早速研究室を与えられることになった。
 『変人の巣窟』が誕生したわけである。
 とはいえ、この3人が特に親しくしていたわけではない。たまたま、この夏の課題に、指定されたグループのメンバーだったというわけだ。

 現在、夏期訓練が終了し、長期休暇を前に期末考査が終了した処。
 さすがに初めての特別訓練はハードではあったが、それぞれに優秀な成績を修めた。いかにもな真田は別格で、万能とも云える才能を多方面で発揮し、早速、『怪物』と認識されるに至る。だが意外なことに、軟弱そうに見えた槇や、いつ脱落するかと陰口をたたかれていた黎那までが実技でも上位の成績を収めたことで、3人は一目置かれる存在となった。
 
 さて。長期休暇中の自由課題である。
「何考えているのさ」
「ロボット制作なんてどう?」
「今更?」
 槇が言うのももっともだ。
 技術科へ進もうと思っている人間なら、既に、1体や2体のロボット製作の経験は持っているだろう。
「――どういうことだ」
 真田の言葉に、うふふん、と黎那が勿体ぶってみせた。組んだ指の上に、その形の良い白い顎を乗せ、笑う。
「キーワードは宇宙。それから、オトモダチ、ね」
 なるほど、と真田が腕を組み思索に走る。
「万能ロボット、だな」
「そういうこと」
「おトモダチってことは…つまり、感情も学習するの?」
「そうそう」
「宇宙に出るなら、分析は必須だな。ボディの強度も必要だ」
「日常生活の補助もできないとね。丹沢製作所で活躍できるくらいには」
「げっ。それって、めちゃくちゃハイレベル」
「じゃなきゃ、面白くないじゃん」
「それならば、中央中枢コンピュータ並みのデータと演算能力も欲しいところだな」
「うふふーん。どこまで迫れると思う?」
 うーん、と槇が首を捻った。
「――高機能アンドロイドにしたいわけ?」
「それは、不可。あくまでも、ロボット。見かけはオールドタイプだよね」
 ヒューマノイド型ロボットには、擬似感情によるやっかいな問題を引き起こすことを防止するために、様々な規制があった。

 「それじゃ武装ロボットってこと?」
「ううん。それはなし」
「うーん。宇宙へ出るのに非武装ロボットって、いざって時に役に立つの?」
 槇の疑問はもっともだが。
「じゃあ聞くけど、槇は“オトモダチ”を楯にして何とも思わないわけ?」
 う、と槇が言葉に詰まった。
「ね? コンセプトがオトモダチだったら、非武装でしょ?」
「藍澤に一票だな」
 真田が口を挟んだ。
「確かに」
 槇も納得したようだ。

 それで、どう? と、黎那がふたりを見やった。
 沈黙が、5秒を数える。

 「「のった」」
 3人同時に、親指を立てた。
「基本設計とデザインは志郎だね」
「制作は、槇。プログラミングは、あたし」
「それぞれ、得意分野を担当、か」
「1か月で足りるかな?」
「それはやるっきゃないんじゃない?」
「――そういうことだな」

 「じゃ、始めようか」
「まずは、基本プランの確認からだな」

 最高に楽しい夏が始まった。

 はずだったのだが。
 3人が音を上げたのは、なんと、たった1週間の後だった。


 =2=

 今日もまた、暑い一日が始まった。
 ここ総合科学研究室でも、暑気に負けず劣らず熱い議論が交わされていたはずだったが。今は、3人共がムッと黙り込み、気まずい沈黙が支配していた。

 黎那が提案したロボット製作の立案は、当初、順調に進んだ。
 いくら変人と呼ばれはしても、天才の誉れ高い3人である。それが一緒に、同じ方向を向いた時に得られるパワーたるや凄まじいものがあった。まるで競うように、パワーもプログラムも詰め込まれていく。それは留まるところを知らず、気付けば、実現不可能な領域にまで達しようとしていた。

 「おい、待てよ。これ、どうやったって夏期休暇中に終わらないぞ」
 最初に声をあげたのは、真田だった。我に返った槇と黎那が、互いの顔を見、目を逸らせた。デスクには、基本設計と基本プラグラムに、次から次へと付け加えられた機能満載の計画書があった。
 ふう、と槇が天井に向かって溜め息を吐き出した。
「削らなきゃ、ね」
 その言葉が、カチンと黎那の勘に障った。
「削るんなら合金の調合を止めればいいでしょ。プログラムは、絶対どこも削らないからね」
 槇を睨むように言った。
「何言ってるんだよ。感情プログラムが一番やっかいなんだから、それを削らなきゃ意味ないだろ!」
「いや」
「いや、って。お前、何言ってるんだよ」
 槇が呆れた声を出した。
「藍澤。槇の言う通りだ。感情プログラムはこのままというわけにはいかない」
「どうせ、真田は槇の味方だもんね」
「藍澤、いい加減にしろ」
 真田もやや呆れ気味である。
「いいか。どっちの味方なんて問題じゃないだろう。これでどうやって期限までに課題を提出するんだ? 俺たちは趣味でロボット作りをしているんじゃない」
「そうだよねー。残念だけど、合金の調合までは、ちょっと無理だね」
「ああ、そうだ。合金だけじゃない。基礎領域をもっと限定しなければ。槇、藍澤、修正プランを考えるんだ」
 真田の言葉に槇は素直に頷き、溜め息と共に計画書を手放した。
「ちょ、ちょっと待てっ。あたしは嫌だっ」
「あのさ、黎那。全部止めようって言ってるんじゃないんだ、修正案を考えよう、って言ってるんだよ?」
「だからっ。修正なんかしないっ。それじゃ、意味がないんだよっ」
 はあ、と真田があからさまに溜め息を吐き出した。
「藍澤。課題が提出できないことこそが、何の意味もないってことだろうが」
「そうだよ、黎那。少し落ち着きなよ」
 黎那の顔が、みるみると歪んだ。ギュッと唇を噛みしめ。
「ばかあっ!」
 そう叫ぶなり、デスクをひっくり返して研究室を飛び出した。
 残された男2人は、呆然とその後ろ姿を見送るだけだった。




序章 第1章(1)(2)<< 『TO YAMATO』第2章(1) >> 第2章(2)

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コメント

No title

・・・ブラウザ評価編。FireFox3.6&Safari5&Chrome8では、文章の右横が切れます。Opera11では正常に改行表示されました。

追記:発売以来18年となりましたノートPC「ThinkPad」で閲覧中。本機の開発は、旧IBMの「大和(ヤマト)事業所」→現レノボ(連想)ジャパンの「大和(ヤマト)研究所」で行われているとのこと。ヤマトつながりのコネタでございました(笑)

| 2010/12/24 |  20:44 | Tacke #- |  URL | 編集 |

Re:よくわからんのです。(><)

★Tackeさま

 いつもどうもです。チェック、ありがとうございます!
 テンプレ、変えてみました。というか、元にもどしました。

 がっ。
 IE6(←^^;)では、レイアウトが崩れてます。(_ _;)
 どーーーして????
 FireFox3.6(だと思うんだけどなーーー?)では崩れない、らしい。

> ・・・ブラウザ評価編。FireFox3.6&Safari5&Chrome8では、文章の右横が切れます。Opera11では正常に改行表示されました。


 うーーーん。大体、IE6という時点で間違っている気がしますが、この辺の決定権は夫にあるので、よーわからんです。(?_?)

 また何かありましたら、是非、教えてください。(懇願)

| 2010/12/26 |  12:14 | ポトス #- |  URL | 編集 |

Re:よくわからんなりに。

テンプレの崩れの理由はわかりませんが、原因はわかりました。

今度はちゃんと見えているはずなんですが…(>▽<;; アセアセ

| 2010/12/26 |  12:41 | ポトス #- |  URL | 編集 |

・・・IE6を「未だ」に使ってるのは、業務用wwwアプリの更新ができないうちの職場みたいな所くらいでございまするzo。セキュリティにも難がございますので、とっとと引退させたほうが・・・。
 次年度、HTML5対応ブラウザが主流となりますので、IE9(←IE8以降WinXp対応しません)or MozirraFF3.6(次バージョン待ち)・Opera11・AppleSafari5・GoogleChrome8など・・・を試用中です。
 
 FireFox3.6でもIE8でも、テンプレ入替後の表示は問題無さそうでありました。

| 2010/12/26 |  18:50 | Tacke #- |  URL | 編集 |

私もそう思うんですが…

★Tackeさま

 無事、テンプレートが元にもどり、ちゃんと表示されたようで一安心です。
 イロイロありがとうございました。

> ・・・IE6を「未だ」に使ってるのは、…セキュリティにも難がございますので、とっとと引退させたほうが・・・。

 ですよねーー。夫がきかないんですもん。
 一度、うっかりIE7にしちゃったら怒られて。またIE6に戻したんですよー。
 XPへのサポートが終わっちゃったら、きっと7にするはずだから、その時でしょうねぇ。

| 2010/12/27 |  02:24 | ポトス #- |  URL | 編集 |

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