胡蝶の夢:更新情報 『TO YAMATO』 07

2010/12/27 19:00

胡蝶の夢~夢の覚え書 を更新します。
宇宙図書館の「BOOKFAIRno.5 Xmas&NewYear petit特集」に参加しています。

『TO YAMATO』
ヤマト時代になる前の、真田志郎を中心とした物語です。
相変わらずオリジナルキャラクター満載ですのでご注意ください。

今回準備不足で、しばらくblog連載という形にしますので、どうぞお付き合いいただければ幸いです。


 序 章 : この丘の向こうに  (1)
 第1章 : めぐり会い      (1)(2)
 第2章 : 夢はかなたへ
    (1)(2)(3)(4)←
 外 伝 : 星下之宴       (既出) 【以下未定】




      第 2 章  - 夢はかなたへ -

(武士のお題:no.26「異国憧憬」)

 =4=

 「――真田には、何かしたいことがあったの?」
「何のことだ?」
 真田がコンソールを叩く手を止めて顔を上げた。

 黎那(れな)は立ち上がり、研究室の窓を開けた。
 空は大分暗くなっていたが、夏の熱気はまだ立ち去ってはいなかった。ムッとした暑気が一気に部屋の中に流れ込んだが、それが涼風に変わるのも直だろう。そろそろ一雨来そうな気配に満ちていた。

 「再生治療と一緒に、何か諦めたんだなって思ったから」
 黎那の勘の良さには舌を巻く思いのする真田だった。
「僕が志郎と知り合ったのって、その後だものね」
 槇(しん)も手を止め、顔を上げた。

 いや。そんな確かなことじゃないが、と少し照れたように真田が言った。
「子どもの頃は、画家になりたいと思っていた。絵が好きだったんだ。たわいもない、子どもの夢だけどな」

 ふうん、画家ねえ、と想像してみたらしい。
「僕には白衣姿しか想像できないけどね」
 槇の言葉に、黎那が吹き出した。
「あのな。子どもの頃の話だろうが」
 真田が渋い顔をする。

「そういうお前達はどうなんだ」
 話題を振ってみれば。

「僕は小さい頃からずうっと同じ。宇宙を飛びたい、だね」
「俺は全然知らなかったぞ」
「だって、誰にも言わなかったもの」
 槇がすました顔で言った。

「黎那は?」
「あたしはさ、父さんみたいな時計を作りたかったんだ。――時計っていうよりも、あの銀の彫刻が美しくてね」

 黎那の父親は、著名な時計技師だ。その精密さは比類無く、名人と呼ばれるに相応しいと評判だった。後を継いだ弟子もまた、その名に恥じない腕を持っていた。

「槇ほどの腕があればなあ、と思ったけど。でも、そのうちゼンマイ仕掛けの仕組みの方が面白くなっちゃってね」
 照れ隠しなのか、黎那はデスクの上を手早く片付け始めた。



 「そうだ」
 思い出したように、真田に顔を向けた。

「源先生がそろそろ見せに来いって言ってた。もう少しこまめに顔出したほうがいいと思うよ?」
 急に真田が顔を歪める。
「わかってはいるんだが。――苦手なんだよ」
「源先生が?」
「いや」
 真田が益々苦い顔になった。
「――麻紀先生の方だ」
 ふたりが盛大に吹き出した。


 麻紀、というのは政也の妻で、丹沢製作所の医師である。丹沢製作所にいるのは、皆、誠実な仕事をする優秀な腕を持つ者ばかりだったが、人格まで誠実だとは限らない。
「いいじゃない。麻紀先生、美人だし、色っぽいし。腕は最高だし」
 黎那が笑った。
 麻紀は、確かに竹を割ったようなさっぱりとした性格で、物言いも歯切れが良い。腕も確かだ。ただ、若い男をからかう趣味を持っている、というだけで。
「――俺の身にもなれよな」
 いくら変人と言われていても、18歳の男であることは紛れもない。白衣を着ていてもそれとわかる豊かな胸元や、ミニスカートの下のこれ見よがしな脚線美に目を奪われないはずもなく。そこへあの性格でからかわれては、朴念仁と言われた真田の手におえるものではなかった。


 「じゃ、そろそろあたしは帰るね」
 黎那が含み笑いを押さえつつ、言う。
「あ、僕も一度部屋へ戻ってくる」
 槇が一緒に立ち上がった。

 一瞬躊躇ったものの、入口へ向かい踏み出した足を止めた黎那が振り返った。
「あ、あのねっ。これからも、よろしくっ」
 早口にそう言うと、バッタのように身体を2つに折った。

 沈黙が、流れる。

 恐る恐る顔を上げた黎那の額を、槇がピンと指で弾いた。
「ばーか。何の心配してるんだよっ」
「だ、だって…!」
 慌てて額を押さえた仕草が、やけに可愛かった。

「これからも、一緒にやっていけるといいな」
 真田の言葉に、黎那が瞳を輝かせ頷いた。

「明日もよろしくっ、チーフ!」

 黎那は返事も待たずに、踵を返して駆け去った。
 後ろ姿を目で追った槇が、嬉しそうに肩を竦めて笑った。
 驚いた真田は、自分が笑みを浮かべたことに、もしや、気がついていなかったかもしれない。


 夕立が、涼気を運んできた。
 夏の夜は更け。
 友への信頼を枕に、眠った。
 

     ********


 この夏の課題は、担当教官の計らいによって3人の卒業制作となり、赤いロボットが誕生することになる。
 アナライザーと名付けられたロボットは、基礎訓練を終えた後、丹沢製作所で暮らすことになった。

 彼がスカートめくりを覚えたのは、勿論、黎那が最初から意図しての事ではない。
 感情プログラムを組む際に、モデルになった人間の影響があったものと思われる。

 モデルになったのは、あの男である。
 戦闘科を首席で卒業し、「スペースイーグル」のふたつ名を持つこの男が加わることで、「変人の巣窟」の呼び名が「梁山泊」へと変更されたことは、もちろん誰も知る由もない。



 何時の時代も、若者の夢は膨らみ。希望に満ち。
 だが。
 この数年後、地球が魔の手に絡め取られてしまうことになるとは、誰も想像できなかった。



 西暦2190年夏。
 地球は、まだ平和な時の中にあった。


2010.12.20 written by pothos





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コメント

・・・ソーダッタノデスネ☆ 

 ドウリデ、古代(弟)サントハ初対面カラズット、気ガアウト思ッテマシタ。

 ンデモ・・・ナゼ、すかーとメクリノターゲットトシテシマウノハ、金髪デ長イ髪ノ女性バカリナノデショウカ?
 モデルトナッタアノオ方ノ、影響デショウカ。ソレトモ・・・疑問疑問・・・ット(撤収)

| 2010/12/27 |  20:46 | Tacke #- |  URL | 編集 |

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