時代と共感。

2011/07/17 16:04

『輪違屋糸里』(著:浅田次郎)を読んでいるが、悪い癖が出た。
上巻を読み終わった処で、どおおおしても結末が気になり、下巻を最後から拾い読みしてしまった。

(苦笑)

よくやるんだよね、これ。
ネタバレ平気というよりも、ドキドキワクワクに堪えられないというか。
度胸がないんだな、きっと。

で、読んでしまったというわけです。

読んでみて自分のカンチガイに気付いた。
これ、私は輪違屋・糸里と新選組・土方歳三の恋物語だと思っていたんだけど、そうじゃないのねー。
これは、女の物語なんだわ。

(以下、もしかするとネタバレになるかもなので、ご注意。後の方でネタバレしてます)

ええと。
先ほども書いたように下巻は拾い読みしただけでまだ1/5程度しか読んでませんから、私の思い違いもあるかもしれませんが、そこはどうぞ悪しからず。

新選組局長・芹沢鴨の女、お梅。
新選組副長・土方歳三に思いを寄せる、糸里。
新選組隊士・平間五郎の女、吉栄。
壬生の屯所である八木邸、前川邸の女主人、お勝とおまさ。

この女達の視点で切り取った新選組であり、幕末という時代が描かれている。
(なるほど、これは『壬生義士伝』も読まねば片手落ちというモノかもしれん。)

物語の流れは、壬生に留まる新選組の成り立ちと、局長・芹沢鴨暗殺に至るまでのあれこれ。

悪役代表、芹沢鴨が大変見事に描かれていて、面白い。
彼の悪逆非道な振る舞いを、独自の視点で切り取った大変興味深いものであると思う。

感想を一言で言ってしまえば。

男ってのは、阿呆だ。
女ってのは、莫迦だよなぁ(泣)。

と言うところだろうか。

男の弱さと、女の強さが描かれていると言ってもいいんじゃなかろうか。
(↑まだ半分しか読んでないくせに、断定・笑)

で。
芹沢鴨に惚れそうだよ。

(笑)

大河ドラマに『新選組!』ってのがあったでしょう?
私はあの頃ネットをしていなかったので、世の評判は知らないんだけど。
佐藤浩市さんが演じた芹沢鴨が、すげー格好良かったことしか覚えてない。(^^;)

白い羽織を着て、屋根の上で飲んだくれいるんだけど。
めちゃ、かっっこよかったんだよねー。

この本の芹沢鴨がまさにああいう感じ。
読んでいて、ぴったりだと思った。

誇りと、鬱屈と、僻みと、拗ね。
まるで駄々っ子が己の才能を持て余しているような。
元々、佐藤浩市さんは好きだったんだけど、あれで全面的にファンになったんだよねー。^^

って、芹沢鴨を語ってどうする、ワタシ。
言いたかったのはそっちじゃないぞ(笑)。

ええと、これが女の物語だってことなんだよね。

幕末ってのは、歴史という大きな渦がとぐろを巻いているような時代で、
そのうねりに何もかもが巻き込まれた。
でも、その時代を描こうとすると、どうしても男の物語になってしまうわけだ。

男の誇り。矜持。正義。信念。

男を武士、と言い換えても良いかも知れないけど。

この物語は、その男の物語を180度回転させて、女の視点で切り取った。
だから、絶対的にカッコイイ男も、強い男も登場しない。
どの男も、皆、ウチに弱さを秘めている。
ある場面では、それを隠し。ある場面では、それを暴露し。

女は、男のその弱さに心打たれる。
守ってやりたいと思い。
愛しいと思い。

何ちゅーか、歴史ってそういうものかもしれん。と思ってしまうわけだ。

男って阿呆。
女は、莫迦だ。

それは、「男の物語」に慣れたワタシの快感であって、他の人がどう思うのかはわからないのだけれど。
そんな男なんて放っておいて、自分の為に生きたらええねん! 
どうしてそこで自分を抑えるんやあああ、と思いつつ。

うううううっ。
そういう男と女の物語が好っきなんだもーん。

あぁあ。
ワタシもそういう男に生まれたかったぜ!
なんちって。

で、何を思ったかというと。
『江』と比べてしまったのだよ。

ああ、不毛。

つまりですね。
ワタシは『江』において、あの時代にありつつ現代の価値観を持ち込んで語っている事が間違いだと思っていたわけなんですね。それが「つまらない」んだと。
それは一面、間違っていないと思う。

この『輪違屋糸里』に出てくる糸里は島原の天神で、吉栄も同じ。
吉栄は好いた男を目の前で殺されてしまうし、糸里は好いた男のために他の男に抱かれる。

ありえーーーん。でしょ、今なら。
でもね、あの時代のあの立場だから。そうしてしまった気持ちは、胸が締め付けられるようにわかるわけで。
友人を残して、ひとり子を産み育てる吉栄も、好いた男のために天神あがりを迎えた糸里も、
現代とは違った価値観の許にある行動にも、深く共感できるわけですよ。
価値観も行動も違っていても、そこにある「想い」はわかるから。

時代劇の妙味ってのは、そこだと思うわけよおおお。
立場も価値観も違っているわけだけどね、時代の中でままならない事情を抱えながらそれでも懸命に生きようとするその心根に惹かれるんじゃないだろうか。

と思ったら、『江』に共感できない理由が分かったような気がしたのよ。
江のしてることって、言ってることって、ただのわがままにしか見えないんだよ。
戦はイヤだ、と思うのはわかるし、そりゃそう言いたいよね。
でも、戦場に向かう夫にむかって「ヒトゴロシはいやだ」ってそりゃなかろーよ?
言われた方の身になって考えてみなよ。

「現代風」に切り取らなくても、思いを共有することはできる。
『江』で言いたいことはわからなくはないんだけど、何かが違っているようにしか見えない。
でも、まだあと半分あるしね。後半、何か光るものがあるといいなぁと思ってます。

本のこと  | コメント : 2  | トラックバック : 0 |

コメント

だから面白かろう(^_^)

>あの時代のあの立場だから。そうしてしまった
>
>時代劇の妙味ってのは、そこだと思うわけよおおお

んだんだ。
ですよね。
…と私も思うわけ。「この時代だったからこうだった。人はこう生きなければならなかった」「この時代だからそれに抗ってこうした」、、、要するに時代や政治や文化や…の波の中でどんな物語や人の生き方がつむがれるかってのが時代劇だろうと思うわけです。あの歴史の中でこの人はどんな役割を果たしたのか、でもいいや。

全部、現代の価値観にしちゃうのなら、時代劇の意味はないし。
これ、海外の歴史ものでも一緒だし。
「そうかぁ、だから今の、現代の日本の自分は」って思うやない?
今なら何すべきなんだろう、とか。何ができるんだろうとか。
単に「今は良い時代だなぁ」とか。時代劇みて「あの時代に生きたかった」って思う人はあんまりいないんじゃないだろうか(少しは思ったとしてもね)。
そういうのが、ある種の「ファンタジー」だろうと思うよ。

| 2011/07/19 |  08:36 | 綾乃 #T61DVtR6 |  URL | 編集 |

時代劇万歳☆

★綾乃さま

 こんにちは~♪

> んだんだ。
> ですよね。
> …と私も思うわけ。

 ですよね、ですよね!

>「この時代だったからこうだった。人はこう生きなければならなかった」「この時代だからそれに抗ってこうした」、、、要するに時代や政治や文化や…の波の中でどんな物語や人の生き方がつむがれるかってのが時代劇だろう

 まさに!
 で、物語やその人物に共感できると、自分でも背景を知りたくなるじゃないですか。
 何も知らなくても楽しめる、でも、知っていたらもっと楽しめる。
 ああ、二度美味しい時代劇。(笑)

 文字にされたものから浮かび上がる情景と、映像で見ることができる情景とがあり、
 それぞれに「プラスα」として作用するのがこれまた楽しい。
 
 何かを受け取るには、自分側のファクターが大きく作用するから、
 読んだ&見た時の状況や年齢によって、変化するじゃないですか。
 物語の全てが、今現在わからなくてもいいんじゃないかと思うんですよね。
 制作の意図を全て間違いなく分からせたい、とか、間違いなく全てを受け取りたいとかいのは、
 互いに傲慢な感じがしちゃいます。
 いいじゃん、見て分からないことがあっても! と思うことが最近の時代劇に感じることがありますです。

 ああ、それにしても劇場で見損なった作品の数々がもったいない…(泣)

| 2011/07/20 |  10:19 | ポトス #Kyq53.yY |  URL | 編集 |

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