『三匹のおっさん ふたたび』読了

2012/11/22 19:00

有川浩著『三匹のおっさん ふたたび』読了。
 

三匹のおっさん ふたたび三匹のおっさん ふたたび
(2012/03/28)
有川 浩

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シリーズ1作目である『三匹のおっさん』を読んだのは数年前になる。
三匹のおっさん三匹のおっさん
(2009/03/13)
有川 浩

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還暦を迎えた三人のおっさん、キヨ=清田清一(きよたきよかず)、シゲ=立花重雄(たちばなしげお)、ノリ=有村則夫がこのまましょぼくれていくのを良しとせず、私設自警団を立ち上げ町内パトロールを初める。それぞれの特技を生かし、それぞれの家族(子ども&孫)を巻き込みながら、事件を解決していく。その奮闘記とも言えるユニークな作品である。

有川さんといえば、『図書館戦争』で人気作家へと駆けのぼったご本人曰くライトノベル作家さんである。
ワタシもご多分に洩れず、『図書館戦争』から読み始めた。

初期の作品は、軍オタを自認する知識を生かしたミリタリー小説?(なんてあるのか?笑)とベタ甘と言われる恋愛要素を大変上手く絡めたものが多かった。
それまで恋愛小説に手を出したことのないこのオバサンでさえも、おっ胸キュン、などと思ったものだ。
(笑)

読者の好みは別れると思うが(実際、ワタシの友人は『図書館戦争』がアウトだった)、類い希なるストーリーテラーと言えるだろう。

デビュー作である『塩の街』と近作2作『空飛ぶ広報室』『旅猫リポート』以外は読んだが、
真っ当なことを真っ当に書き、厭きさせずに最後まで読ませることのできる作家さんだと思っている。

悪いことを悪いと言い切る強さ・潔さがある。
しがらみや誤魔化しが世間に存在することを否定しないが、それを正当化することもない。
時として、キレイゴトと映ることもある。
だが、この読了後の爽快さはなかなか得難い。

ご本人がラノベ作家と仰っているようで、となれば対象となっているのは基本10代の若者であろう。
だから、若者の置かれた辛さや苦悩を蔑ろにせず、丁寧に描く。
そして、必ず若者は成長する。

ワタシは、有川さんが描くのはキレイゴトではなく、希望なのだと思っている。

ベタ甘な恋愛要素が入っていながらも、その胸キュンが健全なのも特徴だろう(笑)。
そう、有川さんの小説には粘着質的な暗さがない。
からっと乾いた青空のような明るさが、ワタシは一番の魅力だと思う。

さて。
前振りが長くなったけど、『三匹のおっさん ふたたび』感想。

前作『三匹のおっさん』は、また上手いところをすくいあげたな、と思った。
この人の「他人が書かないところに物語を作り出す」能力はハンパないと思う。
まぁ、時代小説なんかでも隠居した主人公が事件を解決していく、といのは珍しいシチュではないものの、
それをラノベ作家有川浩がやるのかっ!(笑)って。

この物語を若者がどう読むのかわからないが、ラノベを読む世代の広さを考えるとさすがだよね。
「かっこいい大人」が描いてあるのだから。

関係のない一般論として、若者を批判する大人は大勢いるが、
実際にたばこを吸っている未成年者に対して注意をしようとする大人は驚くほど少ない。
ワタシだってやったことない。(苦笑)

コイツがワルモノだ、と烙印を押された人間に対して無責任な批判をするのではなく、
目の前の小さなワルイコトを指摘する。

『ふたたび』の中の書店と万引きの話にもあるが、
事件に巻き込まれたら、暴力を振るわれたら、逆ギレされたら、訴えられたら、と正しい事が簡単にできない理由は本当にたくさんある。
けれど、できない理由を数えているうちは、何もできないままなんだよね。

これは、最近自分で痛感している事だ。

何でもやれば良いってものじゃない。
だが、やれる方法を考え出すことは本当に本当に大事だ。

どんなに能力があろうと、還暦を迎えたおっさん三匹で全ての問題が解決できるなんてあり得ない。
だが、何かしらできることはある。
必ず、ある。

大人の経験に基づく思慮や分別。
若者の素直さ、熱意、希望。

地域社会から消えてしまった繋がりをコミカルに描いた。
これも、また「希望」のひとつだろうとワタシは思う。

ただ、第1作目でワタシは猛烈に気に入らなかった点がひとつだけあった。
それは、おっさんたちが子育てに対して無責任だったからだ。

活躍する還暦世代、イマドキの若者らしくイキがりつつも頼もしい孫。
対して、親世代のだらしないことこの上なし!
おっさん。このだらしない親世代を育てたのはあんた達でしょ! 頼もしい孫を育てたのは、だらしない親でしょ! そこんとこ、どー思うわけっ!? 無責任すぎないかい!?
と、思っていたのだ。

そしたら『ふたたび』に同じ様な台詞があって、ああ、有川さんもこの親世代が気にかかっていたんだな~と。
『ふたたび』では、この親世代の動きにも注目ですね。
これからの社会の担い手として、微力ながらも責任を持とうとする人はいるんだよ。
そうして社会は継承されていくんだよ。

『ふたたび』のメッセージはそこにあるんだと、ワタシは思うわけである。


ところで、有川さんとは全く別な形で若者の成長を描いている作家さんにハマっている。
辻村深月。

彼女の作品は、透明感のある文章と、綴られる心理描写の巧みさ、ミステリーとしての面白さ、闇の中にさす光の存在が特徴だ。

どちらにもそれぞれの魅力があり、面白い。

でもね。
そろそろこれも卒業しなきゃな~と思ってはいるのだ。
四半世紀近く生きてきて今更なんだけど、大人にならなきゃね、ジブン。

テーマ : 書評 - ジャンル : 小説・文学

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| 2014/06/07 |  16:53 | 藍色 #- |  URL | 編集 |

トラバありがとうございました

☆藍色様

 こんにちは、トラバありがとうございました。
 こちらからからもさせていただきました。^^

 結構長いことblogやっていますが、実はトラバの機能を理解しておらず、初めて使いました(汗)
 重ねて感謝です。^^

| 2014/06/07 |  23:37 | ポトス #Kyq53.yY |  URL | 編集 |

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剣道の達人・キヨ、柔道の達人・シゲ、機械をいじらせたら右に出る者なしのノリ。「還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!」と、ご近所の悪を斬るあの三人が帰ってきた! 書店万引き、不法投棄、お祭りの資金繰りなど、日本中に転がっている、身近だからこそ厄介な問題に、今回も三匹が立ち上がります。ノリのお見合い話や、息子世代の活躍、キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗の初々しいラブ要素も見逃せません。漫...

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