ヤマトの旅立ちと疚しさ

2012/11/26 15:37

疚しさをキーワードにして、ヤマトを考える第4弾。
予定では真田志郎のはずでしたが寄り道します。

「ヤマトがテレサの呼びかけに応じたのは何故か?」がお題。

イスカンダルから帰ってきて1年後、ヤマトは再び旅立つ。平和な地球を後に残して。

その先の展開が「さらば」「2」のいずれになるとしても、旅立つ理由は同じ。
テレサから届いた謎のメッセージに応えるためだ。

「宇宙の何処かで何かが起きている。地球の平和は、宇宙の平和があってこそ!」とヒーロー魂をここぞとばかりに燃やす古代進にワタシは幾分冷ややかだったとはいえ、違和感は持たなかった。
超劇的な結末に目を奪われていたからでもあるが、どんくさいワタシがあれ? と思ったのは少し経ってから。

正体不明の敵というよりも、どこで何が起きているのかわからないという不確定要素が大半の情報を元に、復興途中の地球を後にして発進って如何なものでしょーか、と。

時間が経ち、考えれば考えるほど彼の論理は不思議だった。
沖田艦長が亡い現状で、ヤマトの発進を決定するのは主人公・古代進以外には考えられないとは思う。

古代くん! その理由で平和に暮らしている元仲間を危険にさらすんかい!
とは思ったけど、それが熱血古代進なのだから。それがヤマトの使命なのだからだ仕方がないのだよ、諸君。
と納得しようとしたものの、
あの真田さんも反対しなかったのも不思議だった。
真田さんだけじゃない、元乗組員のほとんどが古代の呼びかけに応じている。
表立って反対したのは、島くんだけ。

まあ、真田さんも実は熱血だし、おちゃめだし、ロマンチストだしな、とか。
真田さんがいないとヤマトなおす人いないしな、とか。
あの白色彗星の出現にから何かしら危機感を感じ取ったに違いない、とか。

納得できたわけではなかったにしろ、島くんに共感するには「命令に背くのは…」という理由が、如何にも格好悪かった。(コドモゴコロには)

助けてくれと言ってきたのがスターシアだったら、それは発進するのが当然だと思う。
ここで恩を返さなきゃ人間じゃないわさ。
けど、メッセージを送ってきたのはどこの誰かもわからない。危機とは何かも不明。
その上、地球はまだまだ復興の途上にあった。
…もうちょっと調べてからでいいんじゃないの? と考えるのは当然だよね。

古代くん熱血だし、主人公だし。
そう思うことでそれ以上考えない事にしたのだけど、ここに「疚しさ」を当てはめて考えたらストンと納得することができたというわけだ。

ヤマト乗組員たちは、ガミラスという国or星を滅亡させてしまったことを、大変心苦しく思っていた。
なぜなら、それは目的とは違った予定外の行動だったからである。
彼らはコスモクリーナーを取りに行ったのだ。
そういう覚悟も無しにガミラスを滅ぼしてしまったのは、必然ではあったとはいえ、結果でしかない。
古代、雪をはじめとした乗組員全員が、あのガミラス星上空で苦い勝利を噛み締めていたはずである。
いくらガミラスを憎んでいたとはいえ、「そんなつもりじゃなかったんだ」というのが正直なところだと思う。

「ヤマト1」では地球人型異星人との交流自体、イスカンダルが初めてっぽい。
少なくとも、大きな戦いがあったことは明記されていない。
地球内での国家間紛争ならば、あそこまで相手を叩きのめすという事態にはならなかったのだろう。
艦内の多くを占めていたであろう古代達18才組を含む若者たちは、敵陣での戦い事態初めてだったと考えられる。
やられたからやり返したら、相手が滅亡してしまった、のだ。

この辺、たぶん、「2199」は違う。
沖田艦長の「ヤマトは旅する艦だ。戦いに行くわけじゃない!」という台詞。
あのだけ見ると、かなり浮いていて観客の苦笑を誘うのも無理はないシーンだけれど、
沖田にあれをはっきりと言わせたからには、何かしらの背景が埋め込まれているんじゃなかろうか。
それは、きっと火星での戦いに関係があり、沖田或いは沖田らの世代はそこにトラウマとなるような悲惨な戦いを経験しているのではないかと考えるのだけど、話が終わらないとわからないところだ。
沖田や土方、藤堂或いは芹沢なんかも、ちょっと共犯っぽい匂いがするしね(笑)

閑話休題。

さて、イスカンダルから帰還したヤマトを地球は英雄として迎えた。「2」にはそういう映像があった。
至極当然の成り行きである。

ヤマトの乗組員たちも嬉しかったろう。
一緒に帰ることのできなかった仲間もいた。
強大な相手との、時間の限られた苦しい戦いだったのだ。
地球を助けることができた、自分も帰ってくることができた。
自分たちの努力は報われたと思ったはずだ。

だが、彼らは彼らしか知らない「ガミラス星の滅亡」をなかったことにはできなかったのだろう。

地球が浄化され、地上へと戻ったとき。
ヤマトに救われた者たちは、素直に未来を希望で満たすことができた者もいただろう。
だが、彼らは素直に喜べなかった。
「自分が生き残った理由」を探そうとし、立派な地球を造ることで償いと考えた。

「地球のため」を心に刻み、ひたすらに戦ってきたことの、
「地球のため」に「他の星」を滅ぼしてしまったことの償いとして。

そして「新しい地球」は偉大なるリーダー沖田の遺志でもあった。
残された乗組員たちは、誰もが「新しい地球」をつくることに最大限の努力をしたはずである。

だが。
彼らの望んだ「新しい地球」は誕生しなかった。
滅亡の淵から這い上がり、新しい技術を得、我が物顔で新しい生活を始めた。
そこに、たぶん悪意はなかった。多少の思い上がりはあったかもしれないが。

それに、イスカンダルから帰ってきた乗組員達はみな若かった。
いくら英雄であろうとも、若造に大きな顔をさせていては軍の規律は保てない。
乗組員は辺境へと散り散りに配置される。眼前に敵のいない現状で、戦闘員に重きは置かれないだろう。
真田が重用されたのは、代替が効かず彼が純粋な戦闘員でなかったからだ。

地球の復興に尽力したであろう彼らは、だが、苦しかった。
理想と現実の違い。
長かった戦いの日々と平和な日常。
小さな積み重ねは、気付かぬウチに心を蝕むものである。

「こんな地球をつくるためにあの旅があったんでしょうか!?」と古代が言ったと同じ事を誰もが感じていたのだろう。
それは、あのガミラス上空での疚しさが起因となっているものなのだ。

ワタシは、上記古代の発言をヒロイズムによるものと思い込んでいたが、そうではなく、自分の疚しさとの戦いの中から出てきた言葉であると考えれば、古代がヤマトで旅立とうとしたことも、古代の呼びかけに皆が応じたことも納得ができる。
古代は有能な軍人でありながらも純粋であり続けた。

古代からの呼びかけに応じた乗組員たちの心情は、ただ単に古代を慕っていたというのではなく、
自分の存在理由にかかわる重大な理由があった。
そして、古代はそれに応えるリーダーとして信頼を得ていた存在だったわけだ。

そう考えると、即座に賛同しなかった島の思考回路は更に複雑だったろうと思える。
島がガミラス上空で疚しさを感じなかったわけではないと思う。
だが、自分の存在価値よりも軍の規律を守ることの方が重要だと考えた。
彼は、もしかすると自身の存在理由を求めることを私利私欲と捉えたのかもしれない。

だから、躊躇った。
自分の中のヒロイズムに身を任せることが、果たして沖田の遺志にそうことになるのか疑問に思った。
だから、佐渡に相談に行ったのだ。
真田でも、徳川でもなく、佐渡だったのはその立ち位置による。

ヤマトは沖田の艦である。
藤堂もヤマト発進に際して「沖田の子らが行く」と発言した通り。
だが、佐渡はたぶん誰の下にもいない。
真田も徳川も古代も、乗組員の誰もが沖田を仰ぎ見るが、佐渡の立ち位置は違う。
ただひとり、沖田にもの申す事のできる存在だった。
それは医師と患者という関係が大きく影響したであろうが、それだけではなかったであろう。たぶん、そういうふたりだった。
その佐渡が行くと言う。
島の心はこの時に決まったのだろう。

では、雪は?
女性だからという理由で古代は雪に声を掛けなかったらしい。
他にどれくらい女性乗組員がいたのか不明だが。(たぶんいないんだよね)
つまり、この時点で古代は雪を「仲間」としてよりも「恋人」として認識しているということになる。

「仲間」ならば。
艦を降りてはいても、自分と同じ憤りを感じているであろうことを古代は微塵も疑っていない。

ガミラス上空で自分が生き残るために他人を滅ぼしたことの疚しさを古代と分かち合ったのは雪だった。
古代は雪のことを誰よりも自分と同じ者として信じていたはずである。

だが、それ以上に古代は雪を失いたくなかったのだろうと思う。
同じ痛みを分かち合う仲間であると同時に、家族を失いひとりぼっちだった古代がやっと得た安らぎだった。
自分の最大の理解者であり、安らぎを失う事など古代は考えたくなかったに違いない。

イスカンダルからの帰路、コスモクリーナーの起動に際して一度雪は命を失っている。
その時の喪失感を考えれば、地球を守るという名の辺境での長期護衛艦勤務は、すなわち雪を守ることだと古代の意識の中では重なっていてもおかしくない。
古代の中で雪は守りたい者、守られるべき者となっていたのかもしれない。

古代にとって、雪は仲間であることも恋人であることも越えた、他には決して替えることのできないたったひとつの存在だったのではないだろうか。

全ての行動が「疚しさ」というキーワードで語れるわけではない。
だが、この時の彼らの行動を疚しさという点で推し量れば、ワタシには納得のいくモノとなる。

あくまでもポトスの戯言だと一笑に付してくださって構いません。
読んで下さってありがとう。^^

テーマ : アニメ - ジャンル : アニメ・コミック

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