柳広司著:『ジョーカーゲーム』

2012/11/28 16:42

夫は戦艦と潜水艦が好きなので、結婚以来、ワタシも戦記物の映画や書物を見る機会が増えた。

かわぐちかいじ氏の『沈黙の艦隊』は、雑誌連載からアニメに至るまでほぼ見ており、ワタシにとってこちら方面の入門書のような役割を果たしてくれた。
 

沈黙の艦隊(1): 1 (モーニングKC (192))沈黙の艦隊(1): 1 (モーニングKC (192))
(2012/09/28)
かわぐち かいじ

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ちなみに、海江田率いる独立戦闘国家は「やまと」という。
アニメ化され、海江田の同期・深町の声を担当されたのは大塚明夫さん。GJ!

が、実は、ワタシは戦記物は苦手。
西南戦争までの時代物は好きだけど、それ以降の近現代モノは苦手で敬遠しがちだ。
ドキュメンタリーであっても、創作であってもそうだし、特に歴史のIFは好きじゃない。

で、ワタシにしては珍しく読んだのが、柳広司著『ジョーカーゲーム』だった。
ジョーカー・ゲームジョーカー・ゲーム
(2008/08/29)
柳 広司

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第二次世界大戦下、日本陸軍に於けるスパイ養成学校・D機関の活躍を描いているミステリー・スパイ小説。
「ジョーカーゲーム」
「幽霊(ゴースト)」
「ロビンソン」
「魔都」
「XX(ダブルクロス)」
短編5編が収録されている。

これが面白いの! エンターテイメントとして楽しめる作品だ。
スパイという暗黒面を扱っているにもかかわらず、ドロドロした嫌らしさとか、人間としての内なる葛藤とか、そういったものがほとんど描かれていないにもかかわらずスパイが活躍するのだ。
爽快感があるわけではないのだが、ミステリーとして気軽に楽しめる作品である。

物語の中心にいるのは、D機関を率いる結城中佐であり、その存在感は抜群。
彼の存在が物語を引っ張っていると言っても過言ではない。
表紙はたぶん結城中佐だと思うが、この雰囲気ぴったりだ。
おじさん好きにはさらに魅力的だろう(笑)

実際に動くのは結城ではなく、彼の育てたスパイたちだ。
彼らは実に優秀である。
不可能を可能にする、超・能力集団である。
一体、これほど優秀な人間がスパイになったのは何故なのか?
スパイとして活動を続ける動機は一体どこにあるのか?
この答えが、ワタシ的には気に入っている。
そこかい! と読み始めた当初ツッコンでしまったが、なるほどねぇと感心してしまった。
そういう心の動きは確かに存在するのかもしれない。
天才ゆえに。

そして、ワタシが一番気に入っているのは結城中佐のいう「人を殺すな。殺されるな」である。
第二次大戦下である。
お国のために命を捧げるのが常識となっている時代に、この言葉。
ワタシがこれを面白いと思うのは、これが人道に基づいて発せられたものではないからだ。

スパイは人知れずに活動しなければならない。
情報を収集するのも、事を起こすのも収めるのも、人口に膾炙していはならない。
敵にも味方にも、敵の諜報機関にさえも気付かれてはならないもである。
こちらが動いていると敵に知られた時点で、それは大きな負債となり、ひいては負けに通ずる。

人が死ぬ。
戦場に於いてそれは当たり前の事であるが、彼らが活動するのは戦場ではない。
日常に於いては、かほどに人目を引くものである。

だから。
人を殺してはならない。
だから。
自分が死んでもいけない。

結城中佐は、そう教えるのであった。

はぁ~そうきたか!

結城の言葉、結城の所作、結城の行動力、結城の意図、結城の戦略。
それらを背景に揺らめかせながら、彼らはD機関の一員として全力で活動する。

エンタメ作品として、楽しめる作品に仕上がっている。

この作品はシリーズとなっていて、現在3冊発行されている。

第2巻は『ダブルジョーカー』
 
ダブル・ジョーカーダブル・ジョーカー
(2009/08/25)
柳 広司

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 「ダブルジョーカー」(「敵手」改題)
 「蠅の王」
 「仏印作戦」
 「棺」
 「ブラックバード」
 5編収録。

D機関に対抗しようとする風機関とのやりとりや、結城中佐の過去が語られるのが魅力だが、ワタシは前作ほどにはのめり込めなかったかな。

最新作は『ロストパラダイス』
 
パラダイス・ロストパラダイス・ロスト
(2012/03/24)
柳 広司

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 こちらはまだ未読。予約が回ってくるのを楽しみに待っているところ。

柳氏の作品は『キング&クイーン』『トーキョー・プリズン』も楽しめた。
 

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 小説・文学

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