『天地明察』

2012/12/07 10:26

本を読んでこんなにワクワクしたのは、とても久しぶりでした。
残りページが少なくなっていくのが残念で、一文一文を刻むように読みました。

読了し、本を閉じたとき、
そこに描かれた世界があたたかい光を放ちながら立ち上ってくるような気がして、
その余韻に浸りました。

面白かった!

天地明察天地明察
(2009/12/01)
冲方 丁

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映画を先に観ました。

天地明察 [DVD]天地明察 [DVD]
(2013/02/22)
岡田准一、宮﨑あおい 他

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発売はまだ先なんですね。来年(2013年)2月22日ですから。

映画の公式HPはこちら

この書籍と映画は、相補的な関係にあると言えるでしょう。
それぞれの利点をいかし、弱点を補い、
それでいて、それぞれが単独でも充分に楽しめる作品となっています。

共通するのは、渋川春海(=安井算哲)という人物の煌めきと、そこに惹かれ想いを託した人たちの存在の確かさ、です。
基本のストーリーは変わりませんが、細かな設定は違っており、人それぞれに好みがあるだろうと思います。

映画作品の優れている点は、第1にヴィジュアルという強みです。
時代物であること、天文学という専門分野が主要舞台であることが説明無しで一目瞭然。
北極出地の様子や天文観測の道具について、その資料的な正確さがどれくらいのものかワタシにはわかりませんが、現代のものについてさえ知識を持たない人間にとって、十二分に驚きと憧れを持たせてくれるものでした。

第2には、演じられた人物の印象の強さ。
いわゆる「キャラが立っている」という事で、役者さんの力量の素晴らしさだと思います。

とにかく、渋川春海を演じた岡田准一さんの真っ直ぐな明るさは、渋川春海という人物の印象として忘れられないものになるでしょう。
また、えんを演じた宮崎あおいさんの凛とした美しさと強さ、
中井貴一さん演じる水戸光圀の豪快さ(←ほんと、この方は時代劇での存在感はハンパないですね)、
松本幸四郎さん演じる保科正之のどっしりとした奥深さ、
佐藤隆太さんの村瀬義益は、町中を生きる者の飄々とした明るさと強さがあり、
市川猿之介さんの関孝和は、当に異才を発揮する天才算術者の風貌で、
笹野高史さん、岸部一徳さんの情熱を秘めた穏やかさと先達としての優しさ、頼もしさは何者にも代え難く、
白井晃さんの山崎闇斎の怪しさとパワーの大きさは比類なく(笑)、
横山裕さんの本因坊道策は才気煥発の佇まい。

「天地明察」という世界を彩るそれぞれの光が互いを打ち消すことなく輝きながら、渋川春海という星の元に終結している様が、
改暦という偉大な事業の元、集う人々の見事さを余すことなく描いていると思います。

第3はストーリー展開。
2時間という枠の中、何の予備知識も持たない素人であるワタシたちを十二分に惹きつける。
原作・史実と違う点がいくつもあるが、それが上手く機能していると思う。

ワタシはとてもとても明るい気持ちでこの映画を見終えたのでした。

そして、その後の書籍。
2時間というドラマの枠の中で生かし切れなかったこもごも、
語られることのなかったあれこれが、
475ページという文字の中でゆっくりと、余すことなく語られている。

ワタシは映画の展開も大変面白かったと思うけれど、原作の方がより好きかな。
緩やかな、けれど果てしない流れの中で、たゆまぬ歩みを続ける人たちの生き様が描かれていて、
その世界に没頭してしまいました。

映画を観ていますから、話の大まかな流れはわかっています。
けれど、そのことがひとつも障りになりませんでした。

映画の見せ方、書籍の見せ方、それぞれの特徴をとらえて上手く構成されていたと思います。

書籍の中で一番印象に残ったのは、保科正之ですね。
戦国の世を終わらせ、天下統一の世を作り上げた徳川家康の時代を継ぎ、
武断の世から泰平の世へと移行させるために己を全うした人物とて、大変魅力的に描かれていました。
渋川春海という人物を中心に描きながらも、
保科という人物が先達から受け継いだモノがあり、それを臣下たちもまた受け止め、渋川という人物を見出し引き立て、想いを託す。
出逢いと別れ、失敗と成功を繰り返し、やがてそれらは時代へと受け継がれていく。

そういう人の世の物語が、雄々しく、細やかに、そして静かに描かれている。

『天地明察』という物語は、渋川春海を題材にしながら、人の世の継承という大いなるものを描いたのだと思います。

ページを繰りながら、残りが僅かになっていくことが惜しくて、
ワタシはゆっくりゆっくりと本を読みました。

読み終えて、岡田くんの顔をした渋川春海が笑っているように思いました。

機会があれば、是非、手にとってみてください。

テーマ : 読書感想 - ジャンル : 小説・文学

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