『八重の桜』第1回感想

2013/01/07 08:07

『八重の桜』 第1回 「ならぬものはならぬ」 NHK 2013年1月6日放送

新大河ドラマ『八重の桜』の第一回を貫いていたのは「美しい風景」だったと思います。

浅学なワタシは、恥ずかしながらこの新島八重という人物を知りませんでした。
「幕末のジャンヌダルク」ですか。
ううむ。知らなかったです。^^;

幕末は好きな時代ですし、新選組から入ったワタシから見れば会津はご縁のある藩ですし、
地理的にもさほど遠く離れた場所ではないのですが、実はほとんど行ったこともないのでした。
そして、白虎隊は何故かワタシ的空白地帯…。
ということで知らない尽くしで始まる大河ですが、その分新しく知るという喜びに恵まれるのではないかと期待しています。^^

記事冒頭、〈美しい風景〉と書きましたが、まず第一にあげられるのは会津地方の美しさでしょう。
磐梯山の裾野に広がる会津地方の風景はとても美しかったですね。


オープニングの曲の中に、緑の平野に桜色の傘がさあっと開いていくシーンがありましたが、
『龍馬伝』の中にあった赤い傘が置いてある京の路地や紅い紅葉の敷かれた畳を連想させました。
タイトル通り、今年のカラーは桜色なんでしょうね。
様式美から映像美へと変化の一端を感じた映像でした。

さて。
始まりが南北戦争だったのは面白いなぁと思いました。
オープニング数分だけ見た長男は「大河ってアメリカの話もやるの!?」ととんまな発言をしておりましたが(笑)
どうやら兵器の開発に伴う近代化された戦いの時代だということを印象付けたかったようですね。
ワタシはペリー来航に始まる幕末の歴史も、日本国内だけのものではなく諸外国との関連があっての歴史なのだと、やってきたペリーさん家の国内情勢と関連させて説明してくれるのかと思いましたがそうでもなかったようで。
あ、でも八重さんの後半生の伴侶となる新島襄を考えれば、幕末を描くとはいっても『龍馬伝』のように国内だけ描くわけではないでしょうから、また繋がりが出てくるのかもしれませんね。


第2の美しさは、封建時代に生きる武士の佇まいでしょう。

会津藩主・松平容保(まつだいらかたもり)が養子として会津に入るところから物語りは始まり、
家老である西郷頼母(さいごうたのも)が年若い藩主に会津藩を語るという形で、
この物語の背景である〈会津藩〉を紹介していくわけです。

それが、大変に美しい。

封建社会の中、武士の描かれ方は様々であり、佳き面も悪しき面も持ち合わせているわけですが、
この回は、その中から珠玉の美しさを選んで武士という存在の基盤を描いていたと思います。
いや、憧れちゃいますよね、こういう存在って。

規律で縛られた存在でありながらも、そこに存在意義を見出し自己を確立しようとする美しさ。
様式美、格式美にも通じる在り方でありながら、失われない精神性。
受け継がれてきたモノを大切にし、守ろうとする姿勢。

見方を変えれば、それらはいくらでも〈旧習〉〈悪弊〉として描くことは可能ですし、
そういう一面を持たなかったというのは詭弁だと思いますが、
初代藩主・保科正之(ほしなまさゆき)の時代から連綿と受け継がれてきたそれらを大変美しい形で描いていたと思います。

ワタシがこれをキレイゴトとして感じなかったのは、たぶん『天地明察』の影響なんですよね(笑)
昨年映画を見て、冲方 丁さんの原作を読み、そこに存在する保科正之という存在がとても印象的で。
(ワタシの記事はこちらです。2012.12.07記事『天地明察』
その保科正之が残した家訓が受け継がれ続けていたことへの喜びと云いますか、
会津で生まれ育ったわけではない容保が会津を愛し、最後まで幕府を守ろうとした姿勢だとか、
それが結局は悲劇を生むわけですが、ワタシはそれをとても美しいと感じるのです。

八重の生家である山本家の雰囲気も良かった。
会津藩砲術師範としての使命感が一家を支える柱でありながら、どこか大らかな温かみも併せ持っている会津藩士の家庭を体現していたのだと思います。

会津は決して、自由な藩風ではなかったと思われます。
生きにくいこともあったであろうことは想像が付きます。
しかし、与えられた環境自体をどう捉えるかによって、人の人生は良くも悪くも考えることができるんじゃないでしょうか。
変化すること、旧習をうち砕くことだけが善ではないのだと思うのです。

また、会津藩の教育もひとつの美しさの結晶ではないでしょうか。
日新館、什の掟に象徴されていましたが、藩全体で子弟を教育し育てていこうとする姿勢は、
今の日本の社会には失われてしまった過去の憧憬であります。

いかにも質実剛健といった藩風が、250年という歴史の中で埋もれてしまうのではなく昇華され結晶となった、そういう美しさを感じさせてくれたと思います。

会津藩士が最も張り切る軍事操練「追鳥狩(おいとりがり)」の真骨頂である模擬戦の最中、大失態を演じてしまう八重の処遇についての、西田敏行さん演じる西郷頼母や兄・山本覚馬の態度も、松平容保の取りなしも良い。
「武士らしいと云われた。卑怯じゃないと(容保に)言ってもらえた」と八重が泣くシーンもワタシは可笑しくなかったと思う。そして「お役に立ちたい、ご恩を返したい。だから、鉄砲を習いたい」と持っていったのは、描き方によっては小賢しく感じただろうけれど、今回はしみじみできた。

それは、「教育」というもののひとつの在り方なのだと、ワタシは思うのです。

八重が父や兄を誇りに思い、同じことをしたいと願う。(←本来、そこが違う場所ではあるんですが・笑)
新しい年若い藩主に、その美しさを誇りとして語る家臣。
会津の血の流れない自分が藩を背負えるのかと悩む藩主に、我々がお支えしますと言い切る家老。

キレイに描いたなぁと思えました。


第3の美しさは、知的好奇心への興奮です。

八重が鉄砲を習うことを否定されても、知りたい学びたいと大人に隠れてでも行動する。
父・山本権八も藩の代表として江戸に留学、当時最先端だった洋式の高島流砲術を学んだというのは物語の中で語られるわけではありませんが、彼の新しい知識への意欲は感じられました。
そして、兄・覚馬が洋式砲術研究の為、江戸の佐久間象山へ入門した際の驚きと貪欲さ。

平安の中にありながらも、新しい息吹を感じる者達。
じわじわと忍び寄る時代の陰をきっとどこかで感じながらも、
知りたい、学びたいと激しく乞い願い、己れの栄達のためでなく、使命感を支えにしつつ懸命に生きようとする。

蘭学が伝来し新しい活力が生まれようとしていたであろう幕末の雰囲気が、とても美しく描かれていた。


第4の美しさ、というと違うかもしれませんけど、役者さんの好演ですね。

松平容保役の綾野剛さん。
容保公の写真を見ると、何かとても似ているんですけど(笑)
といのは置いておいても、若く真面目で才ある藩主という存在を、大変上手く表現されていたと思います。
言葉少なに、表情も概して動かさず、けれど時々の心持ちがふと現れるようで、ワタシは大変好感を持ちました。
いいですね、この容保。

また、脇を固める家臣として西郷頼母役の西田敏行さんは安定感抜群ですし。
八重を叱る時の変化が大変面白かったです。
でも、この方が〈西郷〉っていうと、〈隆盛〉の方を連想しちゃいますね(笑)

山本家の父・松重豊さんは、これまた良い。
質実でありながら、知的好奇心が見え隠れし、最後の「何をしている」には、ワタシ吹き出しちゃいました(笑)

母・佐久の風吹ジュンさんとは、良い案配だと思います。
出しゃばらない慎みを持ちながらも、聡明さを失わず、大らかさも感じさせる「母親」としての佐久。
HPの人物紹介をみると、ひとりの女性としての生き方も見事だと思います。

兄・覚馬。
あら、菊田。かつら似合うじゃん。とか云ったら叱られそうですが。
いいですねー、西島秀俊さん。憧れのお兄さん役が大変填っています。
実際、憧れちゃうと思うようなお兄さんでしたもんね、二枚目というのを抜きにしても。
今後も、物語を牽引する役になるかと思いますので、楽しみですね。

肝心の八重の子役・鈴木梨央ちゃんも大変可愛らしかった。
体を張って頑張ってる感があって好感持てました。^^

佐久間象山役の奥田瑛二さんは、こういう役所、上手いですよね。
変人振りでは、『JIN』の市村正親さんが飛び抜けてましたけど(笑)、奥田さんの象山も気難しいながらも豪快な気風が感じられてワタシは好きです。


というわけで、〈美しい風景〉として会津を描いた初回。
あ。
衣装とか小物とかは、ワタシは審美眼を持ち合わせておりませんので、すみません、目に入ってないのです(滝汗)

とても美しい。
時代が変わっても、その美しさの価値は変わらないでしょう。

けれど。
これがワタシの心に憧憬としてうつるのは、それがもう存在しないものだからです。
あの美しかった会津は、時代の変遷の中、負けたのです。
時代が変わり、社会が変わり、人の生き方も変わった。

かつて存在した美しさは、打ち砕かれてしまった。
近代という時代によって。

けれど、会津は今も存在し続けます。
負けはしても、国も人も無くなりはしない。
そこから立ち上がり、昨日を今日へと繋げ、明日へと踏み出した人たちがいたからです。

ワタシ達は、かつて存在した美しさを否定したりはしない。
けれど、今存在する美しさも讃え、明日の美しさへと繋げながら生きていける。

『八重の桜』の初回が〈美しい風景〉で描かれていたのは、そういうメッセージが込められれているんじゃないのかとワタシは思ったりしたのでした。

妄想混じりで、初回から長文になってしまいました。
ここまで辛抱強く読んでくださった貴方。ありがとうございます~!
次回からはもうちょいコンパクトを心懸けたいと思いますので、またお付き合いくだされば幸いです。








『八重の桜』感想
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テーマ : 大河ドラマ - ジャンル : テレビ・ラジオ

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コメント

No title

こんばんは、tateです。
今年もよろしくお願い致します。

やはりポトスさん、大河は記事にされましたねー(笑)。

松平容保役の綾野剛、確かに写真を見ると似てますよね。
私も思いました。若き殿様を好演していました。

会津という風土の美しさ。
当時の日本人たちが持っていた精神性の美しさ。
「美しさ」をキーワードにしたポトスさんの記事、
なるほどと読ませて頂きました。同感です。

2話以降も期待したいですね。

| 2013/01/10 |  02:41 | tate #KElQvh3c |  URL | 編集 |

コメントありがとうございます

★tate様

 いらっさいませ~今年もよろしくお願い致します。 

> やはりポトスさん、大河は記事にされましたねー(笑)。

 はい~しちゃいました。^^
 しかもカテゴリまで作りましたし、書く気満々です(笑)

> 松平容保役の綾野剛、確かに写真を見ると似てますよね。
> 私も思いました。若き殿様を好演していました。

 あ、やはり? 似てますよね!
 ワタシ、この方どこかで…と思っていたんですが、朝ドラ『カーネーション』に出演されてたんですね。
 あの時も、無口で端正な男性の役でしたが、今回もいい感じで期待しています。

> 会津という風土の美しさ。
> 当時の日本人たちが持っていた精神性の美しさ。
> 「美しさ」をキーワードにしたポトスさんの記事、
> なるほどと読ませて頂きました。同感です。

 tateさん、まとめるのがお上手!
 ワタシのあの長文がこんなにコンパクトに!(笑)

 ただ、この初回を生かせるかどうかは今後にかかっているんだと思うんです。
 美しい原風景を胸に、八重がどう現実を生きていくか。
 そこにリアリティを感じられなければ、この初回の美しさは生きてこないんじゃないかと。

 どちらにしても、今後が楽しみですね♪

| 2013/01/11 |  14:19 | ポトス #Kyq53.yY |  URL | 編集 |

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