古代が雪を助けに行った理由

2013/10/15 00:40

菊花開 「菊花開く」



 
 
 
 (図案:「七十二候の切り紙: 切り紙で日本の七十二の季節を楽しむ」より)



2199を見ていて、疑問に思った場面がある。

「2199」の終盤の、古代がガミラスに囚われた雪を助けに行くシーン。
「やっとわかったよ」「自分がすべきこと」「自分にしかできないこと」「それは君を守ことだ!」という台詞のとこだ。


ここは、戦術長という要の職にある自分が、愛する女を助けるために勝手な行動をとることはできないとして、ずっと自分を抑えていた古代が、雪を救出に行くというシーンである。

帝都バレラスへの第二バレラス(の一部)落下を防ぐために沖田は波動砲の使用を宣言する。
「言葉ではなく、その行動で…」とユリーシャが頷く。
「今は誰もが最善を尽くすとき。自分がすべきこと、自分にしかできないことを。だからワタシが雪を」
「だめだ!」
ユリーシャを古代が遮る。
「それは、俺がすべきことだ」
「艦長、自分にゼロでの出撃許可をください」
「古代、現時点をもって君の戦術長としての任を解く。別命、古代一尉は森船務長救出の任に就け!」
「はい!」

というわけで、古代は雪を助けるためにゼロを駆る。

沖田が古代を雪救出に向かわせた理由は、「囚われているのが雪だから」ではないと思う。
雪が優秀な乗組員だからだとか、親友土方が愛情を注いでいたからだとか、そういった特殊な感情に起因する理由ではない。

同胞は、同胞であるという理由だけで、命をかけて守るに値するものだからだ。

同胞は、同胞であるという理由だけで存在する価値があり、本来、他の何を犠牲にしても守らなければならないものなのである。
それを蔑ろにする、つまり、その同胞が優秀だとか、特別に愛しているだとか、美しいだとか、身分が高いとか、同族集団に利益があるだとか、そんな理由で同胞を選別する者に、人はついていかない。

古代が雪を助けに行くことを沖田が許したのは、
雪が優秀な艦橋のメンバーだからではなく、同胞を救出する事は、命をかけるに値する行動だからである。

この場合、古代がいかなければならない理由は特にない。
艦載機隊のエースである加藤や山本でも良い。教官であった榎本さんあたりも、もしかしたら適任かもしれない。
つまり、これは古代でなければできない任務ではなく、他の誰かにもできる任務である。
その、他の誰かにもできる任務を、古代は自分の責任として引き受けた。
つまり、自分にしかできない任務だからそうしたのではなく、誰かがやらねばならない任務を自分の事として引き受けたのである。

それが、尊いのだとワタシは思う。

もし助られるのが雪ではなかったとしたら、古代はもっと早い段階で救出を提案していたであろうと思われる。
このように、日常的に危機的な状況にある場合、仲間を見殺しにするという行為は決して選択されるべきではないからだ。
それは、可哀想だとか哀しいとかという感情故にではない。
自分にもしものことがあった時、全体の利益の為には簡単に個人を切り捨てることがわかっている集団に、人は本気で属しようと思わないからである。
もちろん、戦場において味方を切り捨てて退却するような場面はあり得る。
だが、それを当然のこととして行う上官の下で、いつ自分が切り捨てられるかわからない中、兵が己の命をかけて戦うことはできないからである。
戦場におけるTOPへの全幅の信頼とは、長は決して自分を見捨てることはないという個々人の確信と同義であると思う。

沖田が集団の存続をかけてまで、個人を守ろうとするようなシーンはそれまでなかった。
ただ、どんな不利な状態になろうと、戦うことを、勝利を諦めなかったというだけだ。
それは「同胞の生存を守り続ける」事に等しい。
乗組員達の沖田への信頼とは、決して戦いを諦めない、つまり、決して同胞を見捨てない、という処にあるのだと、ワタシは思う。

古代は。
自分のすべきことは、君を守ることだ、という。

ひとりの男が愛する女へ発する言葉として、全く正しい。
ずっとうじうじと悩んでいた古代が、どうしてそう決意したのかはよくわからない。
というか。
ユリーシャが助けに行くのを見ているくらいなら、それは俺がやるんだ!!
てな感じの勢いに思えなくもないのだが(笑)

結果として、古代は「同胞を守るという誰かがやらなければならない危険な任務を、命をかけて自分の責として引き受ける」というTOPに絶対必要不可欠な要素を引き受けたのだ。
それが、最終盤の「何だか艦長みたい」という台詞に引き継がれるのである。

繰り返すが、彼の行為は「戦術長としての任務を放りだして、好きな女を助けに行った」のではなく、「誰かが引き受けなければならない危険な任務を引き受け、同胞を見事助け出した」ということなのだ。
たとえ、そこに男と女のドラマが存在しても、古代の行動に対する価値が揺らぐものではない。
だからこそ、沖田はその行動を支持したのである。

どーも、彼自身にはその自覚がないように思えるが、それもまた「古代らしさ」というのかもしれない。
だが、本気でTOPに立とうというのなら、それは「天然」な性質だけではなく、自覚することが必要であるが、まだ古代は自分がTOPになろうという明確な意思はないようなので、天然のママでもOKである。

問題なのは。
そういう意味合いの行動であったはずが、「自分にしかできないこと」をしているという中二病的なカッコ良さに見えてしまう、という演出の仕方だと思う。

まるで「自分探し」の青少年に向けて、「誰にでも自分にしかできない事ってあるんだよ! 探さなきゃ!」と言っているように見えるということである。

ワタシは思う。
自分にしかできないことをすることと同じように、誰にでもできることを自分の責として引き受け全うすることも、とても大切なことであり、それをする者がいなくなったら、共同体は崩壊する。

誤解を恐れずに言えば、
「自分にしかできないこと」というきらめく幻想を追いかけるよりも、「誰にでもできるからといって見向きもされないようなこと」を覚悟をもって自分が引き受けよう、その行いの積み重ねが共同体を支えているのだ、というメッセージの方が、ワタシは「2199」に合っているように思うのだけど、
どーも、「自分探し」をしているように見えてしまって、その点がどうにも納得いかない。

自分探しは、もうやめようよ?

「2199」を見る度に、なんか違うんだけどな、と違和感を覚える場面なのだ。

テーマ : 宇宙戦艦ヤマト2199 - ジャンル : アニメ・コミック

ヤマトのこと  | コメント : 6  | トラックバック : 0 |

コメント

No title

ありがとうございます!「それは俺がすべきことだ」と古代君がそれを言う意味がようやくわかりました!ずっとすわり心地が悪かったんです!

| 2013/10/15 |  04:48 | ゆきんこ #- |  URL | 編集 |

No title

「自分にしかできないこと」というきらめく幻想を追いかけるよりも、「誰にでもできるからといって見向きもされないようなこと」を覚悟をもって自分が引き受けよう、その行いの積み重ねが共同体を支えているのだ、というメッセージの方が、ワタシは「2199」に合っているように思うのだけど

感銘。まさしくそうです。
誰かがこれをやらねばならぬ、期待の人が俺たちならば、、、
の現在進行形が2199なのだろうと思いつつ、そのさりげない当たり前、
という意味ではじんわり、これから繰り返し観て考えたいと思います。

| 2013/10/15 |  22:58 | 勘助 #- |  URL | 編集 |

Re: コメントありがとうございます。

☆ゆきんこ様

 こんにちは~コメントありがとうございます。

> ありがとうございます!「それは俺がすべきことだ」と古代君がそれを言う意味がようやくわかりました!ずっとすわり心地が悪かったんです!

 持論を強引に展開していましましたが、同意していただけたのなら、とっても嬉しいです♪

 「2199」の制作陣は、蘊蓄と背景の説明をこれでもかってくらいに、話のあちこちに埋め込んでありますよね。
 自分的にキャラクターがぶれるように見えるのは、どこかでそういうメッセージを読み間違えているのかなーと思ったりしますが、ワタシには消化しきれない…^^;
 気楽に楽しめってことなんでしょーか。(笑)

| 2013/10/15 |  23:43 | ポトス #Kyq53.yY |  URL | 編集 |

Re:コメントありがとうございます。

☆勘助様

 こんにちは~いらっしゃいませ。^^

> 感銘。まさしくそうです。
> 誰かがこれをやらねばならぬ、期待の人が俺たちならば、、、
> の現在進行形が2199なのだろうと思いつつ、そのさりげない当たり前、
> という意味ではじんわり、これから繰り返し観て考えたいと思います。

 同意していただけて嬉しいです。^^
 そうですよねー、ちゃんと「誰かがこれをやらねばならぬ」って言ってますよね。
 と、実は今気が付いたりして…^^;

 制作陣が伝えたかったメッセージをどう拾い上げるのかというのは、これからの楽しみかもしれませんね。
 情報が多すぎて、ワタシには分からないことがいっぱいあるんですもん。あはは。
 で、ネタが拾えたら遊びます♪(笑)

| 2013/10/15 |  23:50 | ポトス #Kyq53.yY |  URL | 編集 |

No title

ポトス様、

初めまして。足跡から来ました。
私もすっきりした、というのか、ああ、そうだったのかって、感動しました。

>「自分にしかできないこと」というきらめく幻想を追いかけるよりも、「誰にでもできるからといって見向きもされないようなこと」を覚悟をもって自分が引き受けよう、

この言葉には、特にグッときました。ヤマトに限定されず、生きていく上でも大切なことだと。

また訪問します。

| 2013/10/17 |  19:35 | 愛希穂 #- |  URL | 編集 |

Re: コメントありがとうございます

☆愛希穂様

 はじめまして! ようこそいらっしゃいました。^^

> 初めまして。足跡から来ました。

 すみません、足跡消してないくせにあちこち訪問させていただいてます。^^;

> 私もすっきりした、というのか、ああ、そうだったのかって、感動しました。

 共感していただけましたか。ありがとうございます。嬉しいです。^^

> >「自分にしかできないこと」というきらめく幻想を追いかけるよりも、「誰にでもできるからといって見向きもされないようなこと」を覚悟をもって自分が引き受けよう、
>
> この言葉には、特にグッときました。ヤマトに限定されず、生きていく上でも大切なことだと。

 ありがとうございます。
 性質的にあまのじゃくなもので、ついつい「そーじゃなくてさ」って言いたくなっちゃいまして…(汗)
 「自分にしかできないこと」っていうのも、悪い事じゃないとは思うんです。
 それはそれで、自分ひとりで責任もプレッシャーも引き受けなきゃいけないことですから大変だと思います。
 バレラスにいた雪のように。
 でも、そうじゃないとこにも目を向けてもいいんじゃないかと、ついつい思ってしまって…^^;
 何かしら共感していただけたのなら、嬉しく思います。^^

 こちらこそ、これからもよろしくお付き合いください。(*^^)/

| 2013/10/18 |  21:52 | ポトス #Kyq53.yY |  URL | 編集 |

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