ヤマト切り絵 古代守 と「鹿の王」読んだよ

2015/06/06 16:23

ヤマト切り絵93 古代守
ヤマト切り絵93 古代守

「鹿の王」(上橋菜穂子著)を読みました。
うっかり予約をするのが遅くなってしまい、ようやく今頃。

※続くに感想書いてますが、ネタバレありますのでご注意。※


上橋さんといえば、「守り人」や「エリン」がヒットしてますし、
2014年には国際アンデルセン賞受賞、
2015年は本屋大賞を受賞しているので多くの方がご存知かと思います。

ワタシはたぶん彼女の著作はみな読了しているはずですが、
物語としては「獣の奏者」が一番面白かったと思っています。
彼女の場合、文化人類学者というのが一つのカラーだと思いますし、
そういう視点でとてもよくできた物語ではないでしょうか。

「主人公が若者でない」という点も珍しく、
「守り人」や「鹿の王」はワタシ達世代のファンタジー読者をがっちり掴むのかも。
基本的に児童書なので、下品な濡れ場とかも出てこないし(笑)
作品以外の情報を持っていないので、彼女が何故児童書にこだわるのかワタシは知りませんが、
児童書だから表現できるモノがあるのかもしれないとは思います。

ワタシの周囲では、この作品への評価は賛否両論といったところです。
下巻まで読む気が起こらなかったという人も居れば、
さすが、という人もいます。
ワタシは上巻の方が興味深くじっくりと読めましたが、下巻は物語の展開に引きずられつつ読んだ感じ。


著者の書きたかったことというか、伝えたかった内容はわかったと思う。
舞台設定も、文化人類学を専攻している彼女の持ち味が十分に発揮されている。
物語の展開も、あちこちの伏線とその回収が巧みで、読者の予想を裏切る展開もあり面白い。
正直、最後のリムエッル登場は思ってみなかったので驚いた(笑)

主人公である「ヴァン」は派手さはないものの魅力的。
「守り人」のジグロもそうだが、この年齢の男性の強さ弱さ、意地、絶望、愛情等々を語るのは上手い。
一方、若者側主人公であるホッサルはイマイチというか、魅力が十分に発揮されておらず残念というか、勿体ないなぁと思う。
脇役であるミラルの方が生き生きとしていて印象が強いくらい。

この差は何なのかというと、年齢的に著者の書きやすさに由来しているのかもしれないが(笑)
今回の物語については、医療というテーマが著者の中で消化されきれていなかったのが原因ではないか。
医療、あるいは命、生きるということというのはこの作品のテーマの一つだと思うが、
ホッサルの説明がくどくて長い。
僅かな差違や言葉の違い、或いは言葉のとらえ方の違いが、
先に広がる景色さえも変えてしまう。
それをわかりやすく読者に訴えかけているのだろうけど、くどいし、やっぱりこなれていない感があり、
ホッサル(つまり著者)の訴えたかったことが不鮮明な箇所が何カ所かあった。

医療について言えば、現実の歴史を彷彿とさせる記述が多い。
せっかく異世界を舞台にしているのにもかかわらず、現実に引き戻されてしまい、夢が覚める感じがある。
リアルと整合性なんてなくても構わないから、
「私の世界ではこうなのよ」ってくらいの強引さがあった方が、面白かったのはないかと思う。

そういう意味では、「守り人」シリーズの生活感やその描写、「エリン」シリーズの聖獣の描写などは、
ぶっ飛びつつも整合性を失わず、かつ現実を彷彿とさせないという点で大変優れていたと思う。

と書くと、じゃあ面白くなかったのか、といえばそうではない。
続きが読みたくて、二日ツブした(笑)

おっさん側の主人公であるヴァンについては、いろいろと考えされられることが多く、
物語だけではく、途中読む手を止めて、考えにふけっていたのも一度や二度ではない。
幼子が灰色だった世界に彩りをもたらす、というのは古今東西物語のパターンではあるけれど、真理なんだろうとも思える。
苦い経験をし、傷ついた心を持ちながら、新しい出逢いに惹かれていくというのも、
この年齢になるとすんなりと受け入れられる。
というか、それもまた人生の深みなんだろうと温かい気持ちになった。

この物語全部を絶賛するつもりはないが、やはりこの著者は他にはないモノを持った人であると思う。
たゆまずに創作活動を続けて欲しいと願う。

TAG : 2199 切り絵

テーマ : 宇宙戦艦ヤマト2199 - ジャンル : アニメ・コミック

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